事例の紹介(裁判例)

⑴東京地判平成24年12月18日(平成24年(ワ)第14348号)

本件においては、インターネット上のウェブページにされた以下の匿名の投稿によって名誉が毀損されたかどうかが争点となりました。

【問題となった表現】

本件記事1:「福井で1~2位を争うブラック企業だよ。」

本件記事2:

「情弱は自分が働いてる会社がブラックってことにすら気付けない。

「いい会社だなー」と思って働いてると思うよ。ほかの会社での経験もない若い人しかいない感じだし。

そういう頭弱い若い人ばかり集めるのは人件費削減の方法じゃないか?」

本件記事3:

「#62

強みあるだろが!!

・人件費を極限まで絞り込める

・若い人しかいないからその事に気づきもしないし不満もでない

・福利厚生などもなくてよい

・一般的な会社の事を知らない人ばかりだから比較されない

・情弱ばかりだからそんな会社でも好きになれる

・一般社員に知識がないから簡単に上が言いくるめられる

まだまだあるぞ!挙げればきりがないだろ!わかったか!」

 

【裁判所の判断】

 まず、本判決は、本件各記事につき、以下のとおり、1・2について原告の社会的評価を低下させるものであることを認定しました。

(本件記事1について)

「……本件記事1は,原告がブラック企業であると摘示するものである。

 ブラック企業という単語の意味が一義的でないことは当事者間に争いがなく,証拠(甲11)によると,労働環境の劣悪な企業一般をブラック企業と称し,当該企業が,労働法やその他の法令に抵触し,またはその可能性があるグレーゾーンの条件での労働を,意図的・恣意的に従業員に強いている,あるいは,パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つことを示し,環境破壊や周辺環境・地域社会への配慮・貢献等への考慮が薄い企業であるなどとも解されることがあることが認められる。

 したがって,ブラック企業という場合には,その程度の差はあるものの,労働諸法規等の各種法令に反し,あるいは,反する可能性がある程度まで労働環境等が劣悪であることを示すものといえるから,本件記事1の記載は,原告の社会的評価を低下させるものというべきである。」

(本件記事2について)

「本件記事2は,一般閲覧者の普通の注意と読み方を基準として,前後の文脈(甲3)から解釈すれば,原告の社員には,他の会社で働いた経験のない若い人が多く,そのような社員は,原告がブラック企業であることにすら気付かないという趣旨と解される。

 したがって,原告がブラック企業であることを摘示し,これを前提として意見を述べるものであり,ブラック企業という言葉が,労働諸法規等の各種法令に反し,あるいは,反する可能性がある程度まで労働環境等が劣悪であることを示すものといえることは上記のとおりであるから,本件記事2も原告の社会的評価を低下させるものというべきである。」

(本件記事3について)

「本件記事3は,投稿番号56に対して,投稿番号62で「強みでもなんでもねーな」との意見が述べられたことに対する反論として発信されたものであり,投稿番号56が削除されているため,その内容を明確に理解することは困難である。そして,本件記事3を一般閲覧者の普通の注意と読み方を基準として,前後の文脈(甲3)から解釈すると,企業の強みとして,若い社員が多いため,人件費が少なくてすみ,福利厚生もなくてもよく,そうであったとしても,他の会社と比較されないため,不満も出ないことを指摘するものと解することができるが,前後の文脈から解釈しても,その記載のみでは,原告において現に福利厚生もなく,賃金も極限まで絞り込まれているとまで述べているのか,若い社員が多い場合の強みとして,そのようなことが可能であると述べるにとどまっているのかは明らかではないといわざるを得ず,本件記事3の記載が,原告の社会的評価を低下させるものであるとまではいえない。

 確かに,労働諸法規に反する程度ないし反する可能性がある程度の低賃金であることはブラック企業の一つの指標となり得るものとはいえるであろうが,前後の文脈から解釈しても,本件記事3を一般閲覧者の普通の注意と読み方を基準とすれば,現に原告において支給されている賃金が,上記の程度に達する低賃金であると指摘するものであるとまで解することはできないから,本件記事3が,原告をブラック企業であると摘示するものといえるものでもない。

 したがって,本件記事3について,本件発信者3の発信者情報の開示を求める原告の請求はその余の点について判断するまでもなく理由がない。」

 そのうえで、本件記事1及び2につき、公益目的を否定して違法性阻却事由の不存在を認定し、正当な理由の存在も認定して、原告の開示請求を認めました。

 

 


 

プロフィール

弁護士 田村裕一郎
多湖・岩田・田村法律事務所パートナー

(弁護士登録番号:30183)

【保有資格】
弁護士・ニューヨーク州弁護士

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