事例の紹介(裁判例)

⑵東京地判平成26年5月20日(平成26年(ワ)第4429号)

 本件においては、インターネット上の電子掲示板にされた以下の匿名の投稿によって名誉が毀損されたかどうかが争点となりました。

 

【問題となった表現】

本件投稿1「千葉県我孫子市 A社 給料を払ってくれない どうしようもない経営陣」

本件投稿2「千葉県 我孫子市 A社 ●●というキチガイサイコパスがいる ●●以上の会社」

本件投稿3「千葉県我孫子市A社 死にたい方は入社どうぞ ブラック」

本件投稿4「千葉県我孫子市A社 30年前の技術力で他の会社が食いつきもしない 残飯案件で数をこなし首の皮一枚で生きてる会社 チンピラまがいが残ってしまいまともな社員がいない」

本件投稿5「千葉県我孫子市A社 残業代カットしまくり ブラック 年収200万円台の会社 社内は地獄絵」

 

【裁判所の判断】

 本判決は、まず、以下のとおり、同定可能性を認めました。

本件各投稿は,「いずれも「千葉県」,「我孫子市」,「A社」という記載を含むものであるところ,それらの記載の配列等からすれば,本件各投稿については,いずれも千葉県我孫子市内に所在する「A社」という会社に関する事項をその内容とするものであるとみるべきことは明らかである。そして,原告がその本社を千葉県我孫子市内に置き,「A社」という文字列をその商号の主要部分とする会社であることからすれば,一般の閲覧者は,本件各投稿の内容を原告に関するものであると理解すると認めるのが相当である。」

 そのうえで、上記各投稿につき、下記のとおり判断し、権利侵害の明白性を認めました。

「ア 本件投稿1について

 本件投稿1は,原告において給料の不払があるとの事実を摘示するものであると認められる。そして,当該摘示に係る事実は,一般の閲覧者に対し,原告が従業員に対して給料の支払を不当に拒んでいるとの印象を与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものであると認めることができる。

イ 本件投稿2について

 本件投稿2は,原告には「キチガイサイコパス」と評すべきP4という人物がおり,原告は「P5以上の会社」であるとの事実を摘示するものであるところ,当該摘示に係る事実は,一般の閲覧者に対し,原告がその社内に異常な精神病質者とみられるような人物を抱え,反社会的な活動をも行う集団であるかのような印象を与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものであると認めることができる。

ウ 本件投稿3について

 本件投稿3は,全体として,原告がいわゆるブラック企業であって,その労働条件が劣悪であるとの事実を摘示するものであり,原告の社会的評価を低下させるものであると認めることができる。

エ 本件投稿4について

 本件投稿4は,原告が「残飯案件で数をこなし首の皮一枚で生きてる会社」であり,原告には「チンピラまがいが残ってしまいまともな社員がいない」との事実を摘示するものであるところ,当該摘示に係る事実は,一般の閲覧者に対し,原告の経営状態が極めて悪化しており,社内には真っ当な従業員が残っていないかのような印象を与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものであると認めることができる。

オ 本件投稿5について

 本件投稿5は,原告が「年収200万円台」のいわゆるブラック企業であり,社内が地獄絵と評すべき状態にあるとの事実を摘示するものであると認められる。そして,当該摘示に係る事実は,一般の閲覧者に対し,原告の従業員の年収が押し並べて200万円台であり,また,原告の社内の状況が殺伐とし,従業員が劣悪な労働条件の下で悲惨な状態に置かれているかのような印象を与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものと認めることができる。」

「以上によれば,本件各投稿については,いずれも原告の社会的評価を低下させ,その名誉を侵害するものであり,かつ,その違法性を阻却する事由の存在を窺わせる事情は存在しないことが認められるから,本件請求は,法4条1項1号所定の前記要件を満たすものであるということができる。」

 以上の認定から、結論として、原告の発信者情報開示請求を認めました。

プロフィール

弁護士 田村裕一郎
多湖・岩田・田村法律事務所パートナー

(弁護士登録番号:30183)

【保有資格】
弁護士・ニューヨーク州弁護士

【所属】
第一東京弁護士会

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