発信者情報開示の事例の紹介

電子メールアドレスの開示が認められた事例

発信者情報開示請求においては、電子メールアドレスの開示も認められます。その理由としては、以下の4つがあります。

***理由①***

発信者の特定のために必要であるから

東京地判平成27年9月15日は、

「本件各発信者が法人が保有する携帯端末から本件各投稿を行った場合,氏名等の開示を受けたとしても法人の名称及び住所が明らかになるだけであるから,仮に当該法人が複数台の携帯端末を保有している場合,本件各発信者を特定することができず,その場合,本件各発信者に係る電子メールアドレスを特定することによりこれを特定する必要がある。そして,本件各発信者が個人で保有する携帯端末から本件各投稿を行ったのか,法人が保有する携帯端末から行ったのか,また,仮に法人が保有する携帯端末から本件各投稿を行ったとして,当該法人が複数台の携帯端末を保有しているか否かは現時点で明らかではないから,電子メールアドレスは「侵害情報の発信者の特定に資する情報」に当たると認められる。」として、電子メールアドレスを含む発信者情報の開示を認めました。

(東京地判平成27年9月15日(平成27年(ワ)第2714号))

***理由②***

訴訟提起前の交渉に資するから

東京地判平成27年5月11日は、

「権利を侵害された原告らにおいて損害賠償の請求等を行うに当たっては,訴えを提起するよりも前に示談の交渉を行うことも考えられるところ,原告らが電子メールアドレスの情報の開示を受けることによって,上記交渉が円滑に進められる可能性が高く,このことは損害賠償請求訴訟において被告となるべき者にとっても利益となる」こと、及び「プロバイダ法4条3項は同条1項に基づいて発信者情報の開示を受けた者は,当該発信者情報をみだりに用いて,不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならないとされている」ことを考慮すると、「実質的にも,特定電気通信による情報の流通により権利を侵害された者は,プロバイダ法4条1項に基づいて,氏名又は名称並びに住所に加え,電子メールアドレスの開示を受けるべき正当な理由があると解するのが相当である。」として、電子メールアドレスを含む発信者情報の開示を認めました。

(東京地判平成27年5月11日(平成27年(ワ)第1924号))

 

***理由③***

法律等の規定が氏名や住所と電子メールアドレスを同列に列挙しており、択一的な規定としていないから

東京地判平成27年3月30日は、

「電子メールアドレスは,氏名や住所と並んで発信者の特定に資する情報であるし,法4条を受けた平成14年総務省令第57号は,開示請求の対象とすべき情報の範囲として氏名・住所と電子メールアドレスとを同列に掲げ,両者が択一的な関係にあるとは解されないことからすれば,請求者は,発信者の氏名や住所と併せ電子メールアドレスの開示を求めることができるというべきである」として、電子メールアドレスを含む発信者情報の開示を認めました。

(東京地判平成27年3月30日(平成26年(ワ)第31049号))

***理由④***

発信者情報開示の要件が充足していれば、個別の情報の必要性につきさらなる立証が要求されていないから

東京地判平成27年7月6日は、

「プロバイダ責任制限法4条1項は,特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は,同項1号及び2号のいずれにも該当するときに限り,開示関係役務提供者に対し,開示関係役務提供者が保有する氏名,住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定める当該権利の侵害に係る発信者情報の開示を請求することができる旨を定めている。そして,同法4条1項の委任を受けて定められた総務省令(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第4条第1項の発信者情報を定める省令〔平成14年5月22日総務省令第57号〕)は,発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称(1号),発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所(2号),発信者の電子メールアドレス(3号)等を列挙している。このような発信者情報に関する上記総務省令の定めは,当該開示請求について開示の必要性に関する同法4条1項の要件等が既に満たされていることを前提とした上で,被害者の権利行使の観点及び発信者情報が個人のプライバシー情報に深く関わる情報であって,場合によっては通信の秘密として保護される事項であることを考慮し,開示の対象として相当である情報の範囲を画しているものと解される。

 そうだとすると,上記総務省令が列挙する発信者情報を個別具体的に取上げて,同法4条1項2号の問題として,その開示の必要性を判断することは予定されていないと解することが素直というべきであるから,上記(1)のとおり原告の請求が同法4条1項2号の要件を満たすと認められる以上」、電子メールアドレスを含む発信者情報の開示が認められるとしました。

(東京地判平成27年7月6日(平成27年(ワ)第5974号))

プロフィール

弁護士 田村裕一郎
多湖・岩田・田村法律事務所パートナー

(弁護士登録番号:30183)

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弁護士・ニューヨーク州弁護士

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