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転職会議とは、転職活動をする人向けに、企業の年収、福利厚生、教育体制、退職理由など主に労働条件に関する評判・口コミを提供するウェブサイト(運営会社:株式会社リブセンス)です。
口コミは、その企業の従業員や退職者によって投稿されることから、企業が公表しない「ネガティブな口コミ」も多く、転職活動をする人にとっては貴重な情報源となっています。
その分、事実無根の「ネガティブな口コミ」(「誹謗中傷等」)が投稿されてしまうと、企業にとっては悪影響となります。
転職会議に自社の誹謗中傷等が投稿された場合、主に次の2種類の対応が考えられます。
・削除請求
・発信者情報開示請求
それぞれの対応について、解説します。
⑴ 任意請求
これは、転職会議に対し、裁判手続外で口コミの削除を請求するものです。
自社の主張とともに証拠を転職会議に提出し、転職会議側が違法な権利侵害であると判断すれば、当該口コミの全部又は一部が削除されます。
注意点として、口コミの一部削除があります。
該当の口コミのうち一部が権利侵害であると判断されると、その一部だけが削除(伏字)されることがあります。
当該口コミの全体を削除したいと考えても、問題のある一部を削除されると、残った部分だけでは権利侵害とはいえず、それ以上削除を求めることができなくなるため、注意が必要です。
⑵ 仮処分
これは、仮処分という裁判手続によって削除請求をする方法(「仮処分」)です。
仮処分は、⑴の任意請求の後に行うこともできますし、任意請求をせずに最初から行うこともできます。
ただし、上記⑴のとおり、任意請求で口コミの一部が削除されていると、残った部分で権利侵害等が認められない場合には、仮処分でも削除はできません。
仮処分の場合、裁判所を交えて転職会議側の代理人と直接交渉ができるため、各口コミの権利侵害等の判断や、一部削除の場合であってもその削除範囲を広げることについて、交渉することもできます。
❷ どうすべきか
手間や費用の面では、⑴任意請求の方が少なくて済むといえます。
他方で、⑴任意請求をしても削除に応じてもらえず⑵仮処分に移行する場合や、上記の一部削除の問題を考えると、最初から⑵仮処分を行う方が結果的に時間や費用が節約できる可能性もあります。
どの方法を選択するかは、具体的な口コミの内容等を踏まえて検討することが重要ですので、まずは(顧問)弁護士に相談することをお勧めします。
転職会議の場合、投稿者の特定は、以下のような流れで行います。
(2022年10月からスタートした新制度については、こちら)
❶コンテンツプロバイダ(CP)に対するIPアドレス等の開示請求
❷アクセスプロバイダ(AP)の特定
❸APに対する発信者情報の開示請求(通信ログの保存に注意)
上記❶のとおり、転職会議から、投稿者のIPアドレス等の開示を受ける必要があります。
IPアドレス等の開示請求には、次の3つの方法があります。
⑴ 任意請求
⑵ 仮処分
⑶ 発信者情報開示命令(新手続)
転職会議によると、2021年に、⑴任意請求に対して転職会議がIPアドレス等の開示を行ったものは、0件ということです。
https://info.jobtalk.jp/policy/rating
⑴任意請求によってIPアドレス等の開示を受けることは、かなりのハードルがあるといえそうです。
このように、転職会議で事実無根の「ネガティブな口コミ」が投稿された場合、投稿者の特定までには各種の手続や訴訟を行う必要があります。
また、投稿者の特定の場合、通信ログが消去されるまでに手続を進めなければならないことから、早期に対応することが非常に重要です。
そのため、転職会議で事実無根の「ネガティブな口コミ」をした投稿者を特定したい場合、早期に弁護士に相談することをお勧めします。