事例の紹介(裁判例)

(5)東京地判平成27年1月27日(平成26年()第23041号)

本件においては、インターネット上のウェブサイト「転職会議」に投稿された以下の匿名の記事によって、原告らの名誉権が侵害されたかが争点となりました。

 

【問題となった表現】

本件投稿1:

「夜遅くまで残業をすることも多いので,あまり家事やプライベートとの両立はできないと思います。校了後は一度手があくこともあり、早めに帰ることができますが早めに帰れば帰ったで「仕事していない、手を抜いている、周りに歩調を合わせていない」と言われ、残業が続けば「こだわりすぎだ、経費節約しろ」と言われます。とにかく社長の言う事は1日、2日ですぐ変わるので付いていくのが大変です。それに周りの管理職の人たちもわかっていながら部下を守ってくれることはありません。こういう会社では、女性は仕事をしながらなど難しいと思われます。男尊女卑の傾向が強い社長なので、女性は働きにくいですね。」

本件投稿2:

「はっきりと言って、とても満足できる額ではありません。夜11時くらいまで残業していても、10時までの分しか精算されない制度になっているので、どんなに働いても給料はあがりませんでした。東京で1人暮らししていくのはやっとです。働いている時間、内容ともに反映されていません。賞与は夏が約1.7か月分、冬は2.7か月分ほどでした。ただ、事前にそのようにアナウンスしていても気に入らない部署の人や嫌いは人には、平気でマイナス20%なんてこともあったようです。賞与前の面談などはなく、賞与後に面談で評価を言われるので、まったく面談する意味がありません。決定される前に面談するからこそ意味があるのに……。結局社長の言いなりです。」

本件投稿3:

「会社のほとんどの社員が満足はしていないと思います。後継者として息子が入ってきたそうですが、未経験なのにいばっていると聞きます野で、息子さんくらいは満足しているのではないでしょうか? 被害妄想が激しく、こちらにはそんな気はなくとも「無下にされた」と激怒し、ついには「君には編集者としての素質がない」とまで言われました。だれも何も言わないのは満足しているからではなく、「言ってもムダ」だからです。2~3時間の説教はよくあるので、早く終わらせるために「はい、はい」と謝っている感じです。いわれのないことで退職させられたり降格させられた人を何人も見ました。」

 

【裁判所の判断】

まず、本判決は、本件投稿につき、以下のとおり、原告の社会的評価を低下させるものであると判断しました。

 (本件投稿1について)

 「本件投稿1は,一般読者の普通の読み方を基準とすると,〔1〕原告代表者が,従業員が早めに帰宅することを批判する発言をする一方,残業が多くなると残業の量を減らすように指示をするという首尾一貫しない発言をしたこと,〔2〕原告代表者が指示内容を1日,2日ですぐに変更するため,従業員としてその指示に従うのが困難であり,原告の管理職はそのことを理解しているにもかかわらず,原告代表者から部下を守ってくれないこと,〔3〕原告代表者は男尊女卑の傾向が強く,女性は原告で働きにくいことを摘示するものであり,原告の社会的評価を低下させるものである。

 なお,被告は,〔1〕について,仕事には繁閑の波があり,原告代表者の各発言が矛盾するとか不合理であるとかいうことはできない旨主張するが,当該部分において,上記発言がそのような繁閑の波を前提としたものであることをうかがわせる記載はなく,上記主張は採用できない。」

(本件投稿2について)

 「本件投稿2は,一般読者の普通の読み方を基準とすると,〔1〕使用者が従業員の残業に対して残業代を支払うことは法律上の義務であるにもかかわらず,原告は,従業員が午後10時を過ぎて残業をしても,その分の残業代を支払わないこと,〔2〕原告代表者が気に入らない部署の従業員や嫌いな従業員の賞与につき,平気で20パーセント減額したことがあり,〔3〕賞与に関する面談をその支給後に行い,結局は原告代表者の独断により賞与を定めていることを摘示するものであるから,原告の社会的評価を低下させるものである。

 なお,被告は,〔1〕について,原告において10時以降の残業を認めない制度をとっており,その結果として残業代が支払われないことの印象を想起させるにすぎないと主張するが,当該部分には,原告が残業の許可制をとっていることをうかがわせる記載はないから,上記主張は採用できない。」

(本件投稿3について)

 「本件投稿3は,一般読者の普通の読み方を基準とすると,〔1〕原告代表者の息子が後継者として原告に入社し,未経験なのに威張っているとの話を投稿者が聞いたこと,〔2〕原告代表者は被害妄想が激しく,会話の相手である発信者にその気がなくても「無下にされた」と激怒し,「君には編集者としての素質がない」と述べたこと,〔3〕原告代表者が発信者を含む従業員に対し,2~3時間説教することがよくあること,〔4〕原告代表者が何人もの従業員を恣意的に退職させ,又は降格させたことを摘示するものであり,従業員として,原告代表者又はその後継者と目される息子と接するのが困難であることをうかがわせるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものである。」

 そのうえで、本件各投稿について違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情はないと判断し、原告の開示請求を認めました。

プロフィール

弁護士 田村裕一郎
多湖・岩田・田村法律事務所パートナー

(弁護士登録番号:30183)

【保有資格】
弁護士・ニューヨーク州弁護士

【所属】
第一東京弁護士会

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