事例の紹介(裁判例)

(6)東京地判平成25年12月10日(平成25年()第7936号)

本件においては、インターネット上のウェブサイト「転職会議」に投稿された以下の匿名の記事によって、原告らの名誉権が侵害されたかが争点となりました。

 

【問題となった表現】

本件投稿記事1:

「あまりにも酷いサービス残業が問題となり,2007年に労働基準監督署の監査が入り,労働条件の見直しを求められた。その後,改善する方向に向かうと思いきや,経営者は給料明細の名目を小細工し,抜け道を探ろうとするなど,全く反省の姿が見られなかった。

当然,社員の定着率は非常に悪く,入れ替わりの激しさはトップクラスである。」

本件投稿記事2:

「査定の基準が何もなく,経営者の独断と偏見で成り立っている。

二人の役員は,社員には過酷なサービス残業を求めるだけ求めて,対価を支払う気など全くない様子。社員の給料・賞与を削ってでも,自分たちの報酬額を維持しようとするなど,社員の事や,その家庭の事を考える気などさらさらない様子。

社員の給料を時給換算すると,コンビニのアルバイトよりも低い事は間違いない。」

本件投稿記事3:

「輸出企業ということで,円安時は追い風となるが,リーマンショックからの急激な円高基調になってからの逆風になると,社員には徹底的な経費削減を求め,また,赤字になろうとも,役員2人の報酬は依然がっぽりと取るなど,社員の将来,会社の将来のことなど全く考えていない。自分たちが儲けるだけ儲けて,厳しくなったら,会社を潰せばいいという考えを常に持っている。」

 

【裁判所の判断】

まず、本判決は、本件各投稿記事につき、以下のとおり、原告の社会的評価を低下させるものであると判断しました。

 (本件投稿記事1について)

本件投稿記事1は、「一般読者の普通の注意と読み方によった場合,〔1〕原告においてはサービス残業が余りに酷く,平成19年に労働基準監督署の監査が入り,労働条件の見直しを求められたこと,〔2〕しかし,その後も改善されていないこと,〔3〕社員の定着率が非常に悪く,入れ替わりが激しいことをいうものと解されるから,原告の社会的評価を低下させるということができる。」

(本件投稿記事2について)

 本件投稿記事2は、「一般読者の普通の注意と読み方によった場合,〔1〕原告においては従業員の査定に関する基準が何もなく,経営者の独断と偏見で成り立っていること,〔2〕2人の役員は,従業員に過酷なサービス残業を求めるだけ求めて手当を支払う気など全くないこと,〔3〕従業員の給料を時給換算するとコンビニエンスストアのアルバイトよりも低いことをいうものと解されるから,原告の社会的評価を低下させるものであるということができる。」

(本件投稿記事3について)

 本件投稿記事3は、「一般読者の普通の注意と読み方によった場合,〔1〕原告においては,赤字になっても,役員は多額の報酬を受けていること,〔2〕役員は,社員の将来や会社の将来のことを全く考えておらず,経営が厳しくなれば会社を潰せばいいという考えを常に持っていることをいうものと解され,原告の社会的評価を低下させるものである。」

 しかし、本件投稿記事1及び3については違法性阻却事由の不存在を認定することまではできず、原告の権利を侵害することが明白とはいえないとしました。

 他方で、本件投稿記事2については違法性阻却事由の不存在を認定し、原告の名誉ないし信用を毀損し、その権利を侵害することが明白であると認め、原告の開示請求を認めました。

プロフィール

弁護士 田村裕一郎
多湖・岩田・田村法律事務所パートナー

(弁護士登録番号:30183)

【保有資格】
弁護士・ニューヨーク州弁護士

【所属】
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