事例の紹介(裁判例)(1)~(4)のコピー

***事例(1)***

「とにかくパワハラ最悪。」「精神病んで辞める人多数でいつ訴えられてもおかしくない社長でした。」と書き込まれた!

(1)東京地判平成28年9月7日(平成27年(ワ)第35465号)

本件においては、インターネット上のウェブサイト「転職会議」に投稿された以下の匿名の記事によって、原告らの名誉権が侵害されたかが争点となりました。

 

【問題となった表現】

本件記事〔1〕:

「とにかくパワハラ最悪。」

「気分屋すぎて仕事にならない。」

本件記事〔2〕:

「出来ないような無理難題ばかり押し付け当然出来なければキレる(笑)」

本件記事〔3〕:

「精神病んで辞める人多数でいつ訴えられてもおかしくない社長でした。」

本件記事〔4〕:

「後,ものすごく不潔でした。」

「社長の臭いでも気分悪かったです。」

「とにかくオススメできません。」

 

【裁判所の判断】

本判決は上記の各記事(投稿としては全部1つのものの一部)について、以下のとおり、社会的評価を低下させるか個別に検討した上で、本件記事が1回の投稿であることを認め、記事全体として事実摘示があり、原告らの社会的評価を低下させるものであると判断しました。

(本件記事〔1〕について)

「本件記事〔1〕の前段部分(「とにかくパワハラ最悪」)は,抽象的な記載であり,原告会社の代表者によるパワハラの具体的な事実及び態様を摘示するものではない。しかし,原告会社において,その代表者が従業員に対し頻繁にパワハラに該当する行為を行っているという事実が摘示されているものと解することができる。会社の中でパワハラが頻繁に行われていることは,その会社の評価を低下させることになるということができる。

 本件記事〔1〕の後段部分(「気分屋すぎて仕事にならない」)は,原告会社の代表者が感情に左右され仕事の遂行に支障が生ずるという事実を摘示するものと解することができる。しかし,実際に仕事に支障が生ずるのであれば,会社として成り立っていかないのであり,後段部分は,投稿者の単なる不平不満を述べたものであることは容易に理解できるといえ,原告会社の社会的評価を低下させるものではない。」

(本件記事〔2〕について)

「本件記事〔2〕の前段部分(「出来ないような無理難題ばかり押し付け」)は,原告会社の代表者が客観的に遂行できない内容の業務を従業員に強制しているという事実を摘示しているものと解される。しかし,原告会社の代表者が従業員に無理難題ばかり強制しているとなれば,原告会社の業務は停滞するはずで,代表者がそのようなことを要求するとは考え難いという認識を持つのが通常であり,これを読んだ一般人は,投稿者の不平不満にすぎないと認識すると解される。したがって,当該部分の記載によって原告会社の社会的評価が低下することはない。

 本件記事〔2〕の後段部分(「当然出来なければキレる(笑)」)は,原告会社の代表者は,従業員が無理難題ができなければ,怒り出すという事実を摘示していると解される。しかし,無理難題を要求するということが考え難いことは前記のとおりであり,無理難題でない仕事を従業員が行わない場合に指導を行うことは当然であって,これを読んだ一般人は,投稿者の不平不満にすぎないと認識すると解される。したがって,本件記事〔2〕は原告会社の社会的評価を低下させるものではない。」

(本件記事〔3〕について)

「本件記事〔3〕の前段部分(「精神病んで辞める人多数で」)は,原告会社においては,代表者のパワハラなどにより,多数の従業員が,精神を病んで退職しているという事実を摘示するものと解される。代表者がパワハラを行う会社であるということは,原告会社の社会的評価を低下させることは前示のとおりである。そして,多数の従業員がそのパワハラにより,精神を病んで退職しているという事実は,原告会社が職場環境として劣悪な会社であることを想起させ,原告会社の社会的評価を低下させるものということができる。」   

「本件記事〔3〕の後段(「いつ訴えられてもおかしくない社長でした。」)は,投稿者の意見を述べたものにすぎず,事実の摘示ということはできない。

 これに対し,被告は,会社には合わない人と合う人がいるのは周知の事実であり,投稿者と合わない人がいたとしても原告会社自体の評価を下げるものではないと主張する。しかし,本件記事〔3〕は,代表者自身がそのような問題のある人物であることを示しており,原告会社自体の評価に直結する記載であるということができ,被告の上記主張は採用できない。」

(本件記事〔4〕について)

「本件記事〔4〕の前段部分(「後,ものすごく不潔でした。」)は,原告会社の職場環境が不潔であることを摘示していると解される。不潔とは評価を要する概念ではあるが,清掃が不十分であるなどの事実を示すものと解することができる。そうすると,一般人は,上記記事により,職場環境が悪いということを想起し,原告会社の社会的評価を低下させるものといえる。このように,原告会社の評価を下げるものであり,原告Aの社会的評価を低下させるものとはいえない。

 本件記事〔4〕の後段部分(「社長の臭いでも気分悪かったです。とにかくオススメできません。」)は,従業員が原告Aが発する体臭によって気分が悪くなったという事実を摘示するものと解される。この事実は,原告Aが体を清潔にしていないか衣服を洗濯していないということを想起させ,原告Aの社会的評価を低下させるものということができる。このように上記記載は,原告Aの評価を下げるものであり,原告会社の社会的評価を低下させるものではない。また,本件記事〔4〕の最後の部分(「とにかくオススメできません」)は,投稿者の意見を述べたものにすぎず,事実を摘示するものではない。」

(5)

「(5)上記のように,各記事を個別にみると,事実摘示のないもの,社会的評価を低下させるものでないものもあるが,本件記事は1回の投稿であることが認められ(甲3),記事全体として事実摘示の有無,社会的評価の低下の有無を判断すべきである。

 原告会社に関しては,上記検討の結果からすると,その代表者が従業員に対し頻繁にパワハラに該当する行為を行い,そのため会社では精神を病んで退職している従業員が多数いるとの事実及び会社の職場環境が不潔であるとの事実が摘示されていると解され,いずれも原告会社の社会的評価を低下させるものといえる。

 原告Aに関しては,上記検討の結果からすると,原告Aが発する体臭によって従業員が気分が悪くなったという事実が摘示されているものと解され,原告Aの社会的評価を低下させるものといえる。

 以上のとおり,本件記事により,原告会社及び原告Aの権利が侵害されたことは明らかであるということができる。」

 そのうえで、本件記事による摘示事実の真実性を否定して違法性阻却事由が存在しないと判断し、かつ、本件記事が意見ないし論評には当たらないと判断して、原告らの発信者情報開示請求を認めました。


***事例(2)***

「社長の気分によりいきなりクビになる人を何人も見てきた。」「辞めたくても脅されて辞めれない人もいた。」と書き込まれた!

(2)東京地判平成28年12月12日(平成28年()第31032号)

本件においては、インターネット上のウェブサイト「転職会議」に投稿された以下の匿名の記事によって、原告らの名誉権が侵害されたかが争点となりました。

 

【問題となった表現】

本件投稿:

「【良い点】

社員にはいい人が多い。

こんな会社もあるのだとある意味いい経験になった。

【気になること・改善したほうがいい点】

離職率が非常に高く,社長の気分によりいきなりクビになる人を何人も見てきた。また辞めたくても脅されて辞めれない人もいた。

全体的に見て明らかにワンマン企業である。

福利厚生などは全く整っておらず,ボーナスは出るが寸志。長く勤めたい人には向いていない。

以上」

 

【裁判所の判断】

まず、本判決は、本件投稿につき、以下のとおり、原告の社会的評価を低下させるものであると判断しました。

「一般読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば,本件投稿のうち「社長の気分によりいきなりクビになる人を何人も見てきた」との部分は,原告においては社長の恣意的判断による即時解雇が少なからず見られ,労働法制が遵守されていないとの印象を与えるものであって,原告の企業としての社会的評価を低下させるものといえる。同様に,「辞めたくても脅されて辞めれない人もいた」との部分は,原告においては脅迫による退職妨害も見られ,やはり雇用管理が不適切な企業であるとの印象を与えるものであって,同様に原告の社会的評価を低下させるものといえる。

 被告は,「社長の気分によりいきなりクビになる人を何人も見てきた」との部分につき,どのような理由ないし意味で原告の社会的評価を低下させているのか不明である,「辞めたくても脅されて辞めれない人もいた」との部分につき,告知されていた害悪の具体的内容が記載されていないとして,これらの各部分が原告の社会的評価を低下させるものとはいえないと主張するが,告知されていた害悪の具体的内容の記載の有無等にかかわらず,これらの部分は上記のとおりの印象を与えるものと解されるのであるから,この点に関する被告の主張は採用することができない。」

そのうえで,本件投稿の送信に違法性阻却事由の存在はうかがわれないとし,原告の発信者情報開示請求を認めました。

***事例(3)***

「とにかく社長の言う事は1日、2日ですぐ変わるので付いていくのが大変です。」「男尊女卑の傾向が強い社長なので、女性は働きにくいですね。」と書き込まれた!


(3)東京地判平成27年1月27日(平成26年()第23041号)

本件においては、インターネット上のウェブサイト「転職会議」に投稿された以下の匿名の記事によって、原告らの名誉権が侵害されたかが争点となりました。

 

【問題となった表現】

本件投稿1:

「夜遅くまで残業をすることも多いので,あまり家事やプライベートとの両立はできないと思います。校了後は一度手があくこともあり、早めに帰ることができますが早めに帰れば帰ったで「仕事していない、手を抜いている、周りに歩調を合わせていない」と言われ、残業が続けば「こだわりすぎだ、経費節約しろ」と言われます。とにかく社長の言う事は1日、2日ですぐ変わるので付いていくのが大変です。それに周りの管理職の人たちもわかっていながら部下を守ってくれることはありません。こういう会社では、女性は仕事をしながらなど難しいと思われます。男尊女卑の傾向が強い社長なので、女性は働きにくいですね。」

本件投稿2:

「はっきりと言って、とても満足できる額ではありません。夜11時くらいまで残業していても、10時までの分しか精算されない制度になっているので、どんなに働いても給料はあがりませんでした。東京で1人暮らししていくのはやっとです。働いている時間、内容ともに反映されていません。賞与は夏が約1.7か月分、冬は2.7か月分ほどでした。ただ、事前にそのようにアナウンスしていても気に入らない部署の人や嫌いは人には、平気でマイナス20%なんてこともあったようです。賞与前の面談などはなく、賞与後に面談で評価を言われるので、まったく面談する意味がありません。決定される前に面談するからこそ意味があるのに……。結局社長の言いなりです。」

本件投稿3:

「会社のほとんどの社員が満足はしていないと思います。後継者として息子が入ってきたそうですが、未経験なのにいばっていると聞きます野で、息子さんくらいは満足しているのではないでしょうか? 被害妄想が激しく、こちらにはそんな気はなくとも「無下にされた」と激怒し、ついには「君には編集者としての素質がない」とまで言われました。だれも何も言わないのは満足しているからではなく、「言ってもムダ」だからです。2~3時間の説教はよくあるので、早く終わらせるために「はい、はい」と謝っている感じです。いわれのないことで退職させられたり降格させられた人を何人も見ました。」

 

【裁判所の判断】

まず、本判決は、本件投稿につき、以下のとおり、原告の社会的評価を低下させるものであると判断しました。

 (本件投稿1について)

 「本件投稿1は,一般読者の普通の読み方を基準とすると,〔1〕原告代表者が,従業員が早めに帰宅することを批判する発言をする一方,残業が多くなると残業の量を減らすように指示をするという首尾一貫しない発言をしたこと,〔2〕原告代表者が指示内容を1日,2日ですぐに変更するため,従業員としてその指示に従うのが困難であり,原告の管理職はそのことを理解しているにもかかわらず,原告代表者から部下を守ってくれないこと,〔3〕原告代表者は男尊女卑の傾向が強く,女性は原告で働きにくいことを摘示するものであり,原告の社会的評価を低下させるものである。

 なお,被告は,〔1〕について,仕事には繁閑の波があり,原告代表者の各発言が矛盾するとか不合理であるとかいうことはできない旨主張するが,当該部分において,上記発言がそのような繁閑の波を前提としたものであることをうかがわせる記載はなく,上記主張は採用できない。」

(本件投稿2について)

 「本件投稿2は,一般読者の普通の読み方を基準とすると,〔1〕使用者が従業員の残業に対して残業代を支払うことは法律上の義務であるにもかかわらず,原告は,従業員が午後10時を過ぎて残業をしても,その分の残業代を支払わないこと,〔2〕原告代表者が気に入らない部署の従業員や嫌いな従業員の賞与につき,平気で20パーセント減額したことがあり,〔3〕賞与に関する面談をその支給後に行い,結局は原告代表者の独断により賞与を定めていることを摘示するものであるから,原告の社会的評価を低下させるものである。

 なお,被告は,〔1〕について,原告において10時以降の残業を認めない制度をとっており,その結果として残業代が支払われないことの印象を想起させるにすぎないと主張するが,当該部分には,原告が残業の許可制をとっていることをうかがわせる記載はないから,上記主張は採用できない。」

(本件投稿3について)

 「本件投稿3は,一般読者の普通の読み方を基準とすると,〔1〕原告代表者の息子が後継者として原告に入社し,未経験なのに威張っているとの話を投稿者が聞いたこと,〔2〕原告代表者は被害妄想が激しく,会話の相手である発信者にその気がなくても「無下にされた」と激怒し,「君には編集者としての素質がない」と述べたこと,〔3〕原告代表者が発信者を含む従業員に対し,2~3時間説教することがよくあること,〔4〕原告代表者が何人もの従業員を恣意的に退職させ,又は降格させたことを摘示するものであり,従業員として,原告代表者又はその後継者と目される息子と接するのが困難であることをうかがわせるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものである。」

 そのうえで、本件各投稿について違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情はないと判断し、原告の開示請求を認めました。


***事例(4)***

「査定の基準が何もなく,経営者の独断と偏見で成り立っている。」「社員の給料を時給換算すると,コンビニのアルバイトよりも低い事は間違いない。」と書き込まれた!

(4)東京地判平成25年12月10日(平成25年()第7936号)

本件においては、インターネット上のウェブサイト「転職会議」に投稿された以下の匿名の記事によって、原告らの名誉権が侵害されたかが争点となりました。

 

【問題となった表現】

本件投稿記事1:

「あまりにも酷いサービス残業が問題となり,2007年に労働基準監督署の監査が入り,労働条件の見直しを求められた。その後,改善する方向に向かうと思いきや,経営者は給料明細の名目を小細工し,抜け道を探ろうとするなど,全く反省の姿が見られなかった。

当然,社員の定着率は非常に悪く,入れ替わりの激しさはトップクラスである。」

本件投稿記事2:

「査定の基準が何もなく,経営者の独断と偏見で成り立っている。

二人の役員は,社員には過酷なサービス残業を求めるだけ求めて,対価を支払う気など全くない様子。社員の給料・賞与を削ってでも,自分たちの報酬額を維持しようとするなど,社員の事や,その家庭の事を考える気などさらさらない様子。

社員の給料を時給換算すると,コンビニのアルバイトよりも低い事は間違いない。」

本件投稿記事3:

「輸出企業ということで,円安時は追い風となるが,リーマンショックからの急激な円高基調になってからの逆風になると,社員には徹底的な経費削減を求め,また,赤字になろうとも,役員2人の報酬は依然がっぽりと取るなど,社員の将来,会社の将来のことなど全く考えていない。自分たちが儲けるだけ儲けて,厳しくなったら,会社を潰せばいいという考えを常に持っている。」

 

【裁判所の判断】

まず、本判決は、本件各投稿記事につき、以下のとおり、原告の社会的評価を低下させるものであると判断しました。

 (本件投稿記事1について)

本件投稿記事1は、「一般読者の普通の注意と読み方によった場合,〔1〕原告においてはサービス残業が余りに酷く,平成19年に労働基準監督署の監査が入り,労働条件の見直しを求められたこと,〔2〕しかし,その後も改善されていないこと,〔3〕社員の定着率が非常に悪く,入れ替わりが激しいことをいうものと解されるから,原告の社会的評価を低下させるということができる。」

(本件投稿記事2について)

 本件投稿記事2は、「一般読者の普通の注意と読み方によった場合,〔1〕原告においては従業員の査定に関する基準が何もなく,経営者の独断と偏見で成り立っていること,〔2〕2人の役員は,従業員に過酷なサービス残業を求めるだけ求めて手当を支払う気など全くないこと,〔3〕従業員の給料を時給換算するとコンビニエンスストアのアルバイトよりも低いことをいうものと解されるから,原告の社会的評価を低下させるものであるということができる。」

(本件投稿記事3について)

 本件投稿記事3は、「一般読者の普通の注意と読み方によった場合,〔1〕原告においては,赤字になっても,役員は多額の報酬を受けていること,〔2〕役員は,社員の将来や会社の将来のことを全く考えておらず,経営が厳しくなれば会社を潰せばいいという考えを常に持っていることをいうものと解され,原告の社会的評価を低下させるものである。」

 しかし、本件投稿記事1及び3については違法性阻却事由の不存在を認定することまではできず、原告の権利を侵害することが明白とはいえないとしました。

 他方で、本件投稿記事2については違法性阻却事由の不存在を認定し、原告の名誉ないし信用を毀損し、その権利を侵害することが明白であると認め、原告の開示請求を認めました。


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